施設内研修

平成26年度施設内部研修 キャリアアップ研修Ⅱ
今回も講師として峯尾武巳(みねお・たけみ)教授をお招きしています。

1.研修目的
新任職員の指導教育システム(新任職員研修マニュアル)の作成や役付き職員のキャリアアップの取組みを通して、 経営理念に基づき行動できる職員養成研修システムの基礎づくりをはかる。

2.研修方法
事例研究(ケーススタディ)を通して「ケア・支援の具体的実践方法 ~重度障害・行動障害をもつ利用者の支援と取組み」を 各チーム別に実践する。
その中で、新任職員研修マニュアルの作成と指導技術の向上を目指す。


キーワード
全員が講師

・一人ひとりが主人公・主役
・一人ひとりには他人にはない能力・魅力がある
・新人には新人の良さ、ベテランにはベテランの良さがある

全員が受講者・学ぶ人
・より良くなりたいと思う気持ち
・誰にでもある成長欲求
・出来るようになりたい

・大きな変化や改善はすぐには表れない。
・期待が大きいほど失望や反感も大きくなる。

・小さな変化や成長をみんなで認めて共有する。
・そのためには、目標の共有が大切。
・大きな目標より小さな目標。
・あれもこれもと欲張らない。

・基本は双方向のコミュニケーション。
・質問や伝えるための言葉を鍛える。
・そのためには、話す、聞く、書くことが大切。

はじめに・・・仕事を振り返る。
・介護は一人ひとりの職員が品質。
・一人ひとりが集まって組織がある。
・職員は、その人個人の感情・価値観だけで行動している訳ではない。

・職員は、施設の理念や社会正義に基づいて行動することが求められている。
・施設理念は皆の夢、その夢の実現に協力する。

求められる職員像。
・法人・施設の理念。
・職場の人材養成の目的。 ・職員に求められる行動。 ・職員に求められる能力。 ・職員の日常業務。

職員に求められる能力。
・将来必要な能力・・・・・・・長期目標
・近いうちに必要な能力・・・・中期目標
・現在求められている能力・・・短期目標

・現在の能力を分析・評価する。
・出来ているものは何か? ・すぐ改善できるものは何か? ・努力しないとできないものは何か? ・法人・施設の理念。

-職員としての態度・技術・知識-
・態度とは何か。
挨拶・配慮・協働・・・・・・関係性の構築。
・技術とは何か。
介護技術・パソコン入力・・・業務遂行。
・知識とは何か。
業務日課の理解・支援計画・個人の理解・・・少し先を予測できること。

仕事を覚える方法。
・教えてもらう。 ・見て覚える。 ・予習復習する。 ・練習する。 ・本や業務マニュアル等を読んで学ぶ。  ・質問する。 ・書いて覚える。 ・話し合う。

仕事を教える、伝える方法。
・やって見せる。 ・説明する。 ・資料を示す。 ・一緒に考える。 ・話し合う。 ・叱る。 ・誉める。

仲間、チームへの貢献方法。
・役割を明確にする。 ・目標を共有する。 ・約束、ルールを守る。 ・欠点より長所を認める、伸ばす。 ・自分には何ができるかを考える。  ・報告・連絡・相談の実施。

諺に学ぶ。
・「北風と太陽」。
・話の内容とその意味を考える。
・貴方はどのタイプ北風型? 太陽型?。

コーチングとティーチング。
・コーチングは出来るようになるために助言すること。
・【相手の個性や特質・モチベーションを引き出し、相手自身の目的達成に向けて自発的行動を促す人間技術】 と表現できます。
・コーチングする人は、方法論は知っているけれども、あえて問いかけているのです。すると相手は返事をするまえに、 一瞬考えます。 こうすることで考える力を育成するのです。
・ティーチングとは教えること。
・「Teach=教える」の意味通り「答えを教える」という事。
・まったくの未経験者に「どうすればいい?」と尋ねても、そもそも知らないのですから「わからない」となってしまいます。
・基礎知識がない相手にはコーチングはできません。
・ティーチングとコーチングとの違いは、強制的か自発的かの違いとなります。
「こうすればうまくいきます」と答えを与えるのがティーチングで、「どうしたらうまくいくと思いますか?」と問いかけ、 考えさせることがコーチングとなります。

まとめ・山本五十六の言葉。
・やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ。
・話し合い 耳を傾け 承認し 任せてやらねば 人は育たず。
・やっている 姿を感謝で見守って 信頼せねば 人は実らず。


第2回目の研修から。
介護の特徴を再確認する・・・自覚する。

自分の身体を道具として対象者に関わる・・・人が人に関わる対人援助職。
→コミュニケーションに始まりコミュニケーションで終わる。
支援を必要としている人の生活や人生の質に直接影響を与える。
→職員がそのままサービスの質となる。
感情労働である・・・疲れる、ストレスが多い。

職員に求められる「質のばらつき」という課題・・・人は皆違う、だから目標が必要。
介護職は、介護福祉士を中心とする専門職・・・社会からの期待。
→質の担保は資格だけでなく、臨床経験も問われる。経験には、職務経験だけでなく人生経験も含まれる。
介護の専門職に求められる質は、価値(態度・倫理)、知識、技術の3つに集約される。
→専門領域の事を知っている(知識)だけでなく、実践でき(技術)、そしてその専門領域の専門職としての 振る舞い(価値)が期待されている。

人が育つには何が必要か・・・何をどのように教えるのか。
教育する(ティーチング)

→教育には目標がある。目標達成に必要な知識と技術を覚えて学習しなければならない。 目標は教育サイドが持ている。
指導・助言する(コーチング)
→相手の目標を確認して、その目標に近づくためのいくつかの方法を助言して気づかせる。
指導を受ける人のモチベーションが影響する。そのため、指導を受ける人の目標や動機を確認する必要がある。
質問する力。
→相手の気持ちを聞く、自分の気持ちも伝える、感情を交流させる。

OJT 職場内研修の様々な学習形態。
一斉授業・・・教室スタイルの授業、講演。
発見学習(探求的学習)・・・直感、思いつき、仮説検証、分析的思考。
問題解決型学習・・・問題の発見-究明-解決。(新たな課題の発見)
体験学習・・・参加型学習、グループワーク、演習。
動機付け学習・・・内発的動機、意欲、達成感、自己有能感。

まとめ「職員に求められる態度」
人はパンのみにて生きるにあらず。
→経済的価値や物質的価値に囚われないこと。
職員としての人格的成長・人間成長に価値を置くこと。
→より良くなりたいと思う。成長したいと思う。人間として当たり前の感情に気づくこと。
利用者さんに喜ばれたい、喜んでもらいたい。自分よりも他人の幸せを先に願う人生を選択したことを誇りにすること。
→介護の仕事は、自分のことよりも相手のことを第一に考えること。
笑顔は専門職の条件
→お互いを信頼し、共に生きること。

しかし「人は神ではない、誤りをするというところに人間味がある」
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。


第3回目の研修から。
事例を深めるカンファレンス・・主観から客観へ・・

カンファレンスはケアカンファレンスまたはケースカンファレンスとも呼ばれ、事例研究のひとつの方法であり、 その形態は事例研究会とも呼ばれ「事例の援助過程において、的確な援助を行なうために援助に関わるものが集まり、 討議する会議のこと。
個別援助においては、スーパーバイザーが担当の援助者に対して行なう教育・指導の場であることが多い。援助が複数の機関、 施設にまたがる場合は、関係する担当者が出席し、チーム対応を展開する場ともなる」といわれています。

カンファレンスでは、個人的な体験や問題意識を話し合いから共有し、さまざまな意見や関連する領域の知識との 比較検討を行い、主観的事実から、より客観的な事実へと確認していくことが求められます。
つまり、客観性とは、相互の主観的事実の共有から導き出され、原理原則や知識等との比較検討によって、一般的に認められる 客観的な事実として確認することが可能になっていきます。

話し合いの基礎資料は記録・日誌であり、アセスメント内容や介護計画にもとつく介護の実践記録です。 介護の客観的妥当性の追求は、対象者と出会い生活課題をアセスメントし、具体的な支援過程の展開を検討する カンファレンスの積み重ねの中から探求されていきます。
専門職はこのプロセスに主体的に参加することをとおして、研究方法や根拠にもとづくケアの科学的妥当性について 学習を深めていきます。

私たちは、介護現場で起こる様々な現象に心を動かされ、様々な反応を示す。冷静に判断できることもあれば、 思いつきや感情に左右されながら、優しくなったり、厳しくなったりしている自分に気づくことがある。
状況判断に自信が持てず、うやむやにしたり、思うにようにいかない結果を他人のせいにしてしまうこともある。 しかし、自分の行動に責任を持ち、自分と向き合うことがなければ介護福祉士としての質の向上はありえない。
専門職である介護福祉士は、主体的に考え、自分の行動に責任を持つ基本的姿勢、すなわち、課題や理由を考え、 考えながら行動する反省的実践家としての姿勢が求められる。

ドナルド・ショーンは、1930年ボストンに生まれた多彩な思想家である。ショーンによれば、実証科学を基盤として 形成された近代の専門職の職域・力能やその養成のカリキュラムは、科学的技術の実践場面(問題解決場面)への合理的適用を 原理として、それに熟達することが掲げられ、その習得が専門性の内実を構成してきたと考察している。
一方、教員や看護士、福祉士などのクライエントの複雑(複合的)な問題に立ち向かう新しい専門職は、職務や職域が あいまいなマイナーな専門職とみなされる傾向が強いが、新しい専門家は「技術的合理性」の原理の枠を超えたところで 専門家としての実践を遂行していると指摘している。

ショーンは、従来の「技術的合理性」モデルの限界を指摘し、不確実であいまいな予測しがたい問題状況に対して、 「状況との対話」を通して、自己の経験から蓄積した「実践的認識論」を用いて立ち向かっている、 そうした臨床活動への反省(リフレクション)を基礎に自己の専門的力量を開発していく専門職のことを(反省的実践家)と呼んだ。 (D.ショーン「専門家の知恵」ゆみる出版)
介護福祉士は、他者の行動や感情、思考傾向からその生活上の不具合に気づき、その人の意思を尊重し、よりよく生きようと する力を支えていくことを目標としている。

介護福祉士としての知識や解決方法、感受性を豊かにしていくためには、①対象者に生じている課題発見のプロセス、 ②その課題を解決するための計画を立て実施するプロセス、③解決結果をモニターし改善に結びっけるプロセスに沿った実践が 必要である。
介護リフレクションとは、介護実践のプロセスを丁寧に振り返り、経験から学ぶことであり、介護福祉士は、 実践的認識論を基礎に行為しながら考える新しいタイプの専門職である。


第4回目の研修から。
(1)仕事を支える4つの力
①利用者・人間を理解する力
利用者ひとりひとりを理解する(個別性の理解)
自分を含む人間について理解する力
⇒人が障害をもつとどんな心理状態になるのか
人が歳を重ねるとどんな心理状態になるのか

②生活支援を組み立てる・計画(デザイン)する力
利用者理解と生活や障害を理解する力・総合力・総合する力
アセスメント・情報の収集・分析・解釈
・新規入所者は入所前の状況はどうだったのか
・施設生活の長い方も同様に、前の担当者に確認する事が大切
⇒目標を持つ事の重要性

③生活支援を実践する力
コミュニケ―ション力
生活支援技術
生活を楽しむ志向性
⇒経験に左右される力であり、一番、目につく部分(実践)
①+②がベースとなる部分

④実践を振り返る・省察する力
実践を評価する
自分自身との対話・日々の実践を振り返る
現象との対話・出来事に向き合う…コペルニクス的転回・発送の転換
仲間との対話・共同の省察
⇒定期的にやっていく事の重要性
評価はなかなかできていない部分

(2)4つの力を循環させる仕組み
PDSAサイクル
利用者理解・・・支援計画・・・実践・・・省察
実践事例を基にPDSAサイクルを循環させる
循環はカンファレンスの場で行う
(完璧な人間はいない、だから日々振り返る・・・反省ではなく省察する)

2年間の研修を振り返り...
平成25年度から2ヶ年にわたり、キャリアアップ研修Ⅰ、キャリアアップ研修Ⅱと称して施設内部研修を実施してきました。
初年度は、「身体拘束廃止に関わる取組みについて」を研修テーマに掲げ、併せて「介護・支援実践の振り返りを通してキャリアアップを図る」ことを目的としました。
今年度は新任職員の指導教育、役付職員のキャリアアップ(特に部下への指導、支援力のアップ)に 着目し、職員養成研修システムの基礎づくりを目的として実施しました。
2年間の継続研修を通しチーム編成による具体的なケア・支援の実践を行う中で、異職種、先輩・後輩、上司・部下が円滑なコミュニケーションを図り情報共有をしながら 様々な角度から利用者支援の方法を実践する取組みが行われました。 ともすれば、福祉・介護職場はルーティンワークに埋没しがちな中で、利用者の支援方法を職員皆で模索し、「ご利用者本人は一番何を望んでいるのか」 という視点でみていくことを日常業務のなかで再認識できたこと、異職種、先輩・後輩、上司・部下の間においても、キャリア、 経験、お互いの専門性を生かしたアドバイスや支援を行うことの重要性やグループ間をも超えてやりとりを行っていく協調性・協働性、更に、各グループの事例発表を傾聴することにより各職員が実感として 各取組み内容を共有するということも学んだ2年間であったと思います。

日常業務を行っているなかでは、立ち止まって、自分たちの行っている実践を振り返り、その中で自分と向き合いながら自分自身のどこが良いのか悪いのかを客観的に見つめなおすことは大変難しいことです。 今回の2年間の継続研修は、このような視点で実践していくことの重要性や必要性を学び、「リフレクション(振り返って省察すること)」のもつ意義が認識できたように思います。
また、2年前はPC操作もままならず発表資料の作成にも手間取り、事務系職員に依頼し作成してもらうことも多かったのですが、今年度はパワーポイントの操作にも慣れ、 各グループがそれぞれに個性的なプレゼンテーションができるまでになったことは大きな成果だと思います。

研修期間、一貫して峯尾教授が私たちに主張されていたことは、自分自身を含めて全てをポジティブにとらえること、見ること考えることだったように思います。
峯尾教授には、福祉の仕事のやりがい、働き甲斐はもとより、社会人・組織人としての生き方・働き方まで教わった気がします。
2年間、ご指導いただき、本当にありがとうございました。