施設内研修

平成25年度施設内部研修 キャリアアップ研修Ⅰ
「身体拘束廃止に関わる取り組みについて」を研修テーマに設け、「介護・支援実践の振り返りを通してキャリアアップを図る」 事を目的に研修を行います。
講師として峯尾武巳(みねお・たけみ)教授をお招きしています。

峯尾武巳教授写真

峯尾武巳教授プロフィール
神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部社会福祉学科教授
大学卒業後、身体障害者療護施設、知的障害児施設、特別養護老人ホームに勤務。2005年より神奈川県立保健福祉大学講師、 2009年准教授、2012年より現職。社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員。

背 景
2006年、国連で障害者権利条約(障害者の権利に関する条約)が採択された。 1990年代後半、社会福祉基礎構造改革により戦後50年間、日本の福祉の根幹であった 「措置制度」から「契約制度」へと大転換し、利用者の権利意識の高まりに結びついた。
このような背景の中で障害者自立支援法(障害者総合支援法)・障害者虐待防止法が成立した。

研修を実践するにあったての課題
a.障害者への虐待防止への取り組み→自分たちの仕事の社会的責任を考える。
b.「虐待」という言葉にとらわれない→今までの施設生活と支援方法を見直す。
c.利用者も支援者も安心して施設生活を送るための方法を考える。
→今までの事故やけがの内容と支援方法を振り返る。
d.リスク管理・リスクマネジメントの考えを実践に取り入れる。
→支援計画を見直す。
今までの支援方法を見直し、支援内容と方法の向上を目指す。
クオリティ・インプルーブメント・・・よりよいケアが事故を減らす。

研修方法
介護リフレクションをキーワードに 自分自身の実践内容を振り返る・反省しながら実践する。
支援過程を鏡として、自分自身の支援内容を振り返る。
今回の研修内容は、身体拘束廃止に向けたリスクマネジメントの考え方・・・講義と演習。

峯尾教授より
福祉施設は生活の場となっていることから、同じ事の繰り返しになりがちです。
身体拘束の事も福祉を取り巻く環境変化の一つで、もし漠然と仕事をしているのなら、今までのやり方では通じませんよ という警告の一つだと思います。 福祉施設は非常に大きな社会的責任を持っているという事を自覚し、これからは工夫や新しい取り組み、 新しい考え方が不可欠になってきます。

人をほめる事について。
人間の欠点は言わなくてもすぐに見つかります。本人も概ね自分自身の欠点を理解しています。 そこを指摘されて気持ちの良い人は少ないと思います。
ほめるという事は、その人の良いところを伸ばす事だと思います。相手を常に注意して見ていなければ、 ほめる事はできません。
人間の欠点はなかなか直らなくても、ほめて長所が伸びる事で、欠点を補う事ができるかもしれません。

与えられた課題は、まず自分ひとりで考えましょう。それから2~3人の少人数で話し合うと意見が出やすくなります。
リフレクションとは振り返る事、反省する事。利用者支援への過程を鏡として自分自身の支援内容を振り返る事です。 そしてPDC(S)Aサイクルを回しましょう。
福祉はセンスです。豊かな人間性(話す事・聞く事・書く事)が特に重要です。センスは磨く事ができます。
また、自分の持っている知識は、使って初めて技術になります。
理念・方針というのは、旅人が方向を知るための北斗七星のようなものです。 方向が間違っていないか、たまには振り返る事も必要です。
そして、仕事は楽しくやるものですよ。

身体拘束の件は仕事を取り巻く環境の変化の一つであり、今までと同じように漠然と仕事をしていてはいけない という警告の一つだと思います。
福祉や介護の仕事の楽しさは、利用者さんとのかかわりを通して感じるものだと思います。そのためには、 日々の関わりを振り返り、その中に意味を見いだしていくことが大切だと考えています。
事例研究という分野に該当しますが固く考えずに、定期的に振り返って、お互いに体験を報告し合うことで 仕事をとおした共感から、職員集団としての 一体感や介護に対する姿勢や工夫等、一般的に言われる質の向上が図られることを期待しています。


第2回目の研修から。
①今は時代が変わり共に生きていく時代(子供・高齢者・障害者・外国人…) ~共生社会を目指して~
②話を聞くこと

聞くことも大切な技術…相談援助やカウンセリング。
質問への答えではなく、生きて生活している人間が語った生の言葉としての「語り」。 話を聞くためには、良き聞き手になることが大切。 ・・・ポイントはインタビューアー
⇒話の段取りを勝手に決めないこと。(思い込みや先入観を捨て、話に興味を持ち楽しく聞く事が重要)
③人間を見る・カメラマンになってみる
対人援助の領域ではアセスメントや観察と呼ばれています。(観察とは「観て察する」ということです)
観察するとは、自分自身の五感(視覚・嗅覚・聴覚等)を道具として人間や社会、自然界を感じ取ること。
何をどの視点から見ているのか・・・虫の目(近視眼的)と鳥の目(全体観的)
被写体を写し取りたいと思う撮影者の思い・・・志向性と価値観

まとめ:障害とその人の生活を理解するICF・国際生活機能分類
従来、WHO国際障害分類(ICIDH)が身体機能の障害による生活機能の障害(社会的不利というマイナス面)を分類すると いう考え方に対し、その後改訂された国際生活機能分類(ICF)でが生活機能というプラス面からみるように視点を転換すると ともに、背景因子(環境と個人)等の観点を加えられています。
(環境因子):バリアフリー等…施設サービスも含まれます。(皆さんが変われば大きく変わってくるもの)
(個人因子):皆、「昔は良かったなぁ」と思っている事に目を向けています。
⇒この動機に働きかけることによってウキウキ・ワクワクといった心の躍動感が出てくるもの。 ⇒社会とのつながりにもなってきます。


第3回目の研修から。
⇒他人から学ぶことの重要性。
・自分たちと違う部分から気付く!!
・認めることが大切!!
自分にとっては当たり前の事でも人によっては新鮮に感じることがある。
たまにはオープンに話し合う事も必要。
・年に1回なり、半年に1回なり振り返りながら、楽しむことが大切です。
・みんなは色んな才能があり、役割もそれぞれ違うのだからお互い協力することが大切。

その方を理解したいと思う時、こころだけに注目していても限界があります。自分自身のこころを知るためにも何か 鏡となるものが必要です。
私たちと同じ時代(今)を生きる利用者さんを理解するには、背景としての現代社会を理解する必要がある。
今はどんな時代なのか?そして、その方の障害が発生した時代はどのような社会だったのかを理解し、 障害を抱えながら今を生きているその人を理解したいと思う努力を続ける。
例えば、年代の違う一人ひとりの青春時代を理解するには、当時はどのような社会だったのかと思いを 巡らして話す、聞く、考える姿勢が大切だったことを思い出して下さい。


第4回目の研修から。気づきや感想
・今の支援計画は身体的ケアについての課題や援助内容がほとんど。
・本人の主訴「特にありません」とどう向き合うのかが次の課題。
・身体的な内容については個人マニュアルで整理し、本人の希望や要望を支援計画に入れてみる。
⇒そうすれば支援計画にも動きが出てくる。(身体的な内容では大きな変更はなく、動きがない)
・支援計画の項目の表現を見直したり、主訴を3つ(ハード面・ソフト面・精神面)で分けるのも良い。
⇒重要なことは本人目線で考えてみること。
・パチンコや飲み屋、カラオケに行きたいという希望。(何とかできる方法を模索してはどうか)
⇒こういう希望を支援計画に入れることにより第三者に対しても施設サービスの説明ができると思う。
・特に計画しなければ実行できないような計画が支援計画には必要なのではないかな。
・グループの議論も大切。(とにかく思うことを批判しないで全部出す:BS法)
⇒そこから、私たちのできることは何か?何を行ったら良いのか?を色々と考えてみる。
⇒色んな可能性を考えているときは職員の皆も仕事が楽しくなってくるはず。
◎支援計画の評価は笑顔が増えること(生活が豊かになったこと)です。

身体拘束って?
・小さな不適切な支援(行為)が大きな虐待につながる魔のスパイラル。
・本人の意向に沿わない不適切なケア≠身体拘束。
・身体拘束は緊急避難的行為でなければいけない。

「施設の価値は有名施設長で決まるのではなく職員で決まる」
「経営理念や基本方針を職員皆が共有している施設は強い」
◎福祉サービスは主観が入ってくる難しさがある。(毎日やっていることは単調な事が多い)
※ルーティン
⇒だから、日常何気にやっていることも見方を変える事が大切だと思います。
◎福祉の仕事は山登りと同じ。(登山家)
目標を達成したら次の目標が出てくるもの、それはエンドレスにいつまでも続くものです。
だから、あまり頑張り過ぎないこと(太く短いものよりも細く長いもの、そして「芯」の強いものの方が大切)

◎今は社会の目も意識しなければいけない時代になりました。
・今の支援計画は本人や家族がわかりやすいものですか?
・第三者が施設に入って目につくもの⇒職員の言葉使い、服装、態度、立振る舞い…。
⇒私たちが一番最初にできることは自分自身の事を見直すこと。(適切・不適切の仕訳から考えてみる)


第5回目の研修から。
自尊心をキズつける行為

・ちょっとイライラ。(自分の怒りをぶつけてしまった)
・私たちの日常生活も同じ:仲間うちでも、相手がイライラしたら不快な気持ちに自分もなってしまう。
・人権を守ろうとか難しい言葉ではなく、障害者だって自尊心はあるし、自尊心を踏み滲まれやすい人たちと考えるべき。

一人ひとりが自分らしく生活していく権利
・生まれてから死ぬまではどんな境遇にいる人もみんな同じ。(赤ちゃん、高齢者、障害者だって一緒)
・人権とはどのようなことをいうのでしょうか…日本国憲法第13条「個人の尊厳」
・人権とは、「全ての人々が生命と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利」あるいは 「人間が人間らしく生きる権利で、生まれながらに持つ権利」であり、誰にとっても身近で大切なもの、 日常の思いやりの心によって守られるものです。
私たちの日常生活の一番基本のルールといえるものであり、幸せに生きるために誰にでも認められる基本的な権利。
・法務省が取り扱った人権侵害事件のうち、平成24年では5件に1件が「暴行・虐待」であり、その被害者の8割以上を、 女性や児童、高齢者・障害者が占めています。

愛⇒思いやりの感情。(自分の事をなげうってでも相手の事を思うことだよね)
「利用者も私も同じ」:理屈はわかっていても現実は難しい。
センターで考える。(職員が優先される事は多くないかな?)

経済学でみる
・自分の貴重な時間を仕事に提供する対価として給料をもらっています。(働く事ってそういう事)
・鏡を玄関に設置する所もある。(自分の姿を見て1日の仕事を開始する気持ちを持つ:プライベートを持ち込まない)

介護する人と介護される人の価値観を共有する事。
・時間がない⇔俺を優先してほしい。

不適切なケア⇒身体拘束⇒虐待。
・ベット柵の間に首が挟まる、ベルトが首にからまる…。
⇒福岡宣言『抑制廃止』⇒『私たちは身体拘束はしない』(はじまり)
言った人、やった人の問題ではなくて、やられた人、受け止めた人がどう感じるかという問題。(判断は相手側にある)

虐待を国語辞典で調べてみると…。
・むごい扱いをする⇒それってどんな扱いかな?
本当は不快な思いをさせてはいないか。(施設がどう説明しても社会は言い訳と解釈)

障害者虐待防止法第1条
この法律は、障害者に対する虐待が障害者の尊厳を害するものであり、障害者の自立及び社会参加にとって障害者に対する 虐待を防止することが極めて重要であることと等に鑑み・・・。

身体拘束と虐待の関係。
・施設職員による障害者虐待防止への取り組み⇒管理者の自覚と職員研修。

介護の難しいところ。
大切だとわかっていても、その通りいかない。

援助を必要としている人から学ぶ姿勢を育てる。
・介護は、介護する人と介護を受ける人の価値観の共有が大切です。
・基本的には言語的コミュニケーションによる良好な人間関係が基本となる。
・しかし、意思疎通の難しい方とは非言語による五感を通した感情を読み取ることが大切。
・人間は感情の動物です、相手の感情に寄り添う、しかし、わからないことも多い。
・全てを分かろうとするのは傲慢ではないでしょうか。(人間の不完全性)
・人権や尊厳を理解していても、現実にはその通りにできないことも多い。(ジレンマ)

虐待と内容と意味を理解する、施設理念や就業規則、職員行動規範の理解。
・現状を確認する。
現在のケア内容でおかしいなと思う内容を取り上げてみんなで考える。(不適切ケア)
具体的な出来事から考える、自分がケアされるとしたらどの様なケアを望むかと考える。
・個別ケアから考える。
個別支援計画は本人中心となっているか、業務マニュアル(手順書)になっていないか。
・情報公開。
外部にひらかれた施設づくり、施設の常識と社会常識との比較検討。
・本人や家族が苦情を言ってもいいという雰囲気づくり。
「苦情は職員を育てる」という意識改革、介護者の価値観を押し付けていないか。
重要なのは専門職としての価値観ではなく、一般常識としての価値観⇒施設(専門職)の常識≠社会の非常識。

不適切なケアをなくす。(あることを認め)⇒「不適切なケアをしない」を目指す。
・今の社会(家族や本人)は一生懸命だけでは理解されない⇒説明責任を果たす事が必要
・障害者や家族が置かれている立場を理解する。
・私たちの方が立場は上?
・私たちはいつも見られている。(風通しの良い職場を作る)。
・理想と現実⇒今どこまでできるのか常に考える。(100%叶える事は出来ない)
だから施設の理念や目標をもって仕事をすることが大切。(方向を見失わないため)
・同じことを繰り返しているとマンネリ化する。
・だいたいの事が対応できるようになると足(向上心・工夫)が止まってしまう。(慣れると気付かない)

「疾風ロンド/東野圭吾」~印象に残った文節。
「自分たちに不幸があった時、他の人も不幸になればいいなんて思うのは人間として失格だよ。 むしろほかの人には、 自分の分まで幸せになってほしいと思わなきゃいけない。そうすればきっとその幸せのおこぼれが、 こっちにも回ってくるはずだからね。


第6回目の研修から。
介護現場の特徴と現状を知る

・介護や福祉は労働集約型産業
産業の中でも人間による労働力による業務の割合が大きい産業のことを労働集約型産業という。
現代の日本では接客を行う商業やサービス業などといった第三次産業が労働集約型産業とされている。
・介護は対人援助職
人が人を支援する。人間である職員が介護サービスの品質となる。
・介護の目的は生活支援
生活は本来単調なものです。人は同じことを長く続けると飽きてくる。
生活は皆、違う。(毎日単調で繰り返し、そして多岐多彩)
何も考えない。(どうしてという発想にはならない)⇒マンネリ化しやすい仕事という認識をもつこと。
今回の課題でも感じた矛盾。(必ずしも報われる結果にはならない)
ベルトを外してほしい、ベルトを付けてほしいという訴え。(職員の考えと利用者の考えは違うこともある)
・日々是好日(にちにちこれこうじつ、ひびこれこうじつ)
⇒一日一日には、良い日も悪い日もなく、自分の心の持ちよう、考え方次第で、どんな日もよい日になる。
・一期一会⇒今日会った人と明日は会える保障はない。
・介護は感情労働
サービスの価値は顧客満足度で決まる。同じ事をしていても評価されないこともある。
相手(サービス利用者)の主観性感情に左右される。だから人間関係のストレスが強い仕事。
でも喜びだって感じる仕事。
「今年50歳になり、やっぱり五十肩になってしまい、痛くて仕事が思うようにできない」
⇒利用者から、「いつか治るんだから、頑張るんだよ」って言われた事。
「利用者の皮膚がとても綺麗になったこと」・・・
・学習性の無力感
無力感は学習される。やる気のある職員が辞めていく。一生懸命やっても評価されない。

未来(明日)に向けた業務改善への提案
・知識や技術は人に蓄積される 優秀な人材が退職すると優秀な商品(介護サービス)が一つなくなる。
システム(仕組み)として考える、PDC(S)Aサイクルで考える習慣を作る、慣れる。
・組織風土…組織に集まった個人個人の価値観が集まり平均化され、表面化したもの
組織の価値観→職員の無意識の行動から生まれる暗黙の体質やルール。
これからの課題…組織風土の一人ひとりの理解。リスクマネジメント⇒倫理観の共有化
☆滝上リハビリセンターの良いところを認める。
・介護はクリエイティブな仕事 発想の転換、単調な毎日を楽しく過ごすアイデアと工夫、生活は創り出すもの。
本当は良いか、悪いかという観点⇒専門職の観点(プロフェッショナル観点)、何気なくやっていることを考える。
身体拘束⇒虐待。だから点検して、常日頃、改善していくことが大切になります。
・継続は力なり
あきらめないこと、そのためには組織も個人も目標が必要。目標の共有が必要。 目標は抽象度の高いものより、できるだけ具体的な内容にする。
~一人はみんなのため、みんなは一人のために~one for all all for one